- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 単行本
- クリック: 11回
- この商品を含むブログ (93件) を見る
『エスケイプ』と『アブセント』の二編収録。
主人公が40でホモ、という設定に読む前は若干ひいていたが、読んでみるとなんの問題もなかった。
自分の年が既に40に近くなっているのも原因かもしれない。
その主人公が、人生のターニングポイントに、フラッと出かけた1週間の当てのない旅行。
そしてそこで出会うひとたちとの交流の中で、感じたこと、わかったこと、あれやこれや。
一人称の独特な語り口は、なんかどこかで聞いたことあるなーと思ったら、フモさん(id:globalhead)に似てるんですよ!!
そしていったんそう思ってしまうと、もうこの主人公はそのままフモさんなわけです。
ま、だからかどうかは別として、楽しく読ませていただきました。
ただ、難を言えば、短すぎる(この分量で1200円かよ!!)というのと、「あ、付け足しときました」感の強い『アブセント』が、『エスケイプ』の良さをある意味台無しにしているような気がする。
そもそもアブセントの主人公が“エスケイプ”した動機が弱すぎて理解できないし、ある意味エスケイプで築いたファンタジーをぶち壊すような裏話となってるし、短いなーと感じたエスケイプよりも更に相当短いし、少なくともアブセントも同じ一人称の語り口にするべきだったのでは?と思うのは僕だけでしょうか。
この感覚は『袋小路の男』のときにも強く感じたが、こういう裏話的な物語を付随する、いったい絲山さんの意図はどこにあるのだろうか。照れ隠し???
僕は、おとぎ話はおとぎ話のままでいいんじゃない?って思うのですが。