「パーク・ライフ」 吉田修一

    

パーク・ライフ (文春文庫)

パーク・ライフ (文春文庫)

     
芥川賞受賞の表題作は、とても僕好みの一作だった。

文句なく傑作だと思う。

癖のない文章で、都会の空気感を、ドライすぎず、ウェットすぎず、絶妙なバランスで表現しつつ、すこし透明感というか、非現実な雰囲気も出ているという、なんだか不思議な感覚を味わった。

短編でさくっと読めてしまうので、今後、何度も読み返すだろう。

この作品について、何も起こらない、というような書評をよくみかけるが、僕から見れば実に様々なことが起きているように思う。それとも人が死んだり、不思議な世界に迷い込んだり、ねっとりとしたセックスをしたりしなければ「何かが起こった」ということにはならないのでしょうか。この主人公にとって、ここで語られている期間のできごとは生涯忘れられないであろうと僕は思う。

ただ、村上春樹辻原登の作品などを読んでいても感じるのだが、男性的視点というか、つまり魅力的な女性が出てきて主人公は“なぜか”好かれる、という構成が、はたして女の人はこれを読んで、僕と同じように面白い、傑作だと思えるのかどうかは疑問だ。

でも「ノルウェイの森」なんかも基本的にはその構成でありながら女性にウケはいいみたいだし、みんなその辺はあまり気にならないのかなー。

あと、この作品にもペットのサルが出てきますが、こちらは「けものがれ…」のサルとはある意味対照的でとても興味深い。